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ソフトウェア導入事例 東京大学 大学院 理学系研究科様

【Vol.01】ソフトウェア納入事例 - 東京大学 大学院 理学系研究科様 発表資料作成、研究計画立案のために科学構造描画ソフト導入 -

東京大学 大学院
理学系研究科 化学専攻
物理有機化学研究室
原野 幸治 助教
「国外の研究者の方もみな使用法に習熟されており、
化学構造描画ソフトの国際標準であることは間違いないと
感じています。」

研究・開発されている内容について教えてください

私の研究テーマは、「分子と分子のつながりを考える」科学です。もう少し具体的に言うと、「分子集合体」というものを扱っています。分子集合体とは、その名のとおり二つ以上の分子が互いに相互作用して形成される構造体のことを指します。

合成化学においては一般的に、分子を共有結合によって相互につなぐことで新しい分子 (薬剤やプラスチックなど) を創り出しますが、一方で、共有結合を介さずに、分子が集まるプロセス「自己集合」も、自然界において非常に重要な作用です。事実、我々の体は大小さまざまな分子が自発的に寄りあつまって形づくられています。典型的な例が細胞で、ひとつひとつの細胞は、脂質、タンパク質、糖など様々な分子が相互作用し、その複雑な構造が形成されています。もちろん、ただ構造が複雑なだけでなく、生命活動を維持するために不可欠な高度な機能を発現しています。分子が寄り集まることによって、単独の分子が持たなかった、新しい性質を発現するわけです。

のような分子集合体は自然界にもたくさんみられますが、一方で、人工的に分子をデザインすることで、人為的に分子集合体をつくりだすことも可能です。我々の身の回りでも様々な材料に分子集合体がつかわれています。パソコンのディスプレイにつかわれている液晶や、洗濯や掃除につかう石鹸、洗剤が典型的な例です。しかし、分子の自己集合というのは非常に重要な役割を果たしながら、分子と分子を望み通りに集合させることはそう簡単ではありません。また、その集合のメカニズムについてもまだ明らかになっていないことがたくさんあります。

研究プロジェクトにおける調査の目的は?それによりどのような将来の可能性がありますか?

私の研究では、有機化学に立脚して、精密に三次元構造が制御された新規分子集合体を開発し、その機能を探求することを目的としています。最近では、集合体のもととなる材料として、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの新しい炭素材料に注目しています。炭素の同素体としては黒鉛やダイヤモンドが古くから知られていましたが、近年、新しい形をもったこれらの炭素同素体が次々に発見され、科学者の注目を集めています。私は、これらの炭素材料に有機化学反応を施すことによって、新たな三次元集合体を構築する研究を進めています。特に、炭素材料がもつ特有の性質、機能を自己集合化によりさらに高めた高次機能性物質を創り出すことを目標としています。 我々が新しく開発した炭素材料集合体は、医薬としての利用や、エネルギー問題の解決に資する新材料など、様々な応用が期待されています。最近では、遺伝子を細胞に効率的に送り込むフラーレンや、新しいエネルギー源として期待される太陽電池の材料となる炭素材料の開発に日々取り組んでいます。

また同時に、これらの炭素材料を題材として、いまだ謎が多い分子集合のメカニズムを明らかにすることも課題の一つとしています。現在は、高分解能の電子顕微鏡を駆使して、単一分子レベル (ナノメートルレベル) での分子集合のメカニズムを解明しようという、自然摂理の根底にある難しい課題に挑戦している最中です。

研究はどのように進められていますか?

我々は有機化学に立脚したものづくりを研究の主軸としています。そのため、まずは望みの分子をデザインし、有機合成実験によって実際に作り出すことから始まります。長いときでは数ヶ月もの期間を費やして、試行錯誤しながら目的の分子を合成することもあります。このように苦労して合成した分子が、自分達が予想したとおりの挙動を示すこともありますが、実際にはデザイン通りにうまく働かないことも多々あります。その場合はまた分子のデザインの練り直しです。
また一方で、こちらが予想していなかったようなより面白い性質を示すこともあります。これが研究をやっていて一番楽しいことの一つで、いろいろな仮説を立てながら、予想外の性質の起源を実験的に探っていくと、思いもよらない大発見につながったり、または新しい研究の芽が生まれてさらに研究が進展することもあります。こういった発見に出くわした際には、そこにたどり着くまでにかけた長い時間と苦労もあいまって、喜びもひとしおです。

ChemBioOfficeの用途や目的と扱っている物質・化合物等の種類は何ですか?それはどのように使われていますか?

ChemBioOfficeパッケージの中でも、主に描画ソフトであるChemBioDrawを毎日のように使用しています。一般的な描画ソフトでは、化学系の学術雑誌においてはChemBioDrawで描いた図を掲載することが標準となっており、国際的な標準ソフトウェアとして認知されています。

有機化合物はもちろん、無機化合物、高分子、生体分子にいたるまで、様々な化合物に対応しているのが強みです。我々が使うフラーレンやカーボンナノチューブのような三次元的な構造を持った分子、物質も容易に描画することができます。化学構造以外にも、様々なオブジェクトが用意されています。例えば、実験につかうガラス器具の絵も用意されており、これらは実験手順を図示して説明するときなどに非常に重宝しています。 また、化学構造検索ソフトとも連携しているので、ChemBioDrawで書いた構造式をそのまま検索ソフトの構造式入力に貼り付ける、といったような便利な使い方もできます。

ChemBioOfficeを使ってみようと思われたきっかけは?

有機化学にたずさわる以上、ChemBioOfficeはレポートや発表資料の作成や研究計画の立案に欠かせないソフトウェアになっています。私が化学研究に足を踏み入れたのは 10年ほど前になりますが、まず最初に学んだのが描画ソフトであるChemBioDrawの使い方でした。私の所属する研究室でも、毎年、研究室に配属される卒業研究生には、まずこのChemBioDrawの使い方を教えるところから始まります。国外の研究者の方もみなChemBioOfficeの使用法に習熟されており、化学構造描画ソフトの国際標準であることは間違いないと感じています。

ChemBioOfficeの使用感、良い点と悪い点は?

ペンで化学構造を書いたり紙で絵を貼り付けたりするような感覚で、直感的に図の作成ができる点が気に入っています。作成した図は、Microsoft Officeの書類に直接貼り付けることもでき、資料の作成や論文の執筆をスムースにしています。

気になる問題点としては、本ソフトは頻繁にバージョンアップされるのですが、その度に様々なバグが生じることです。最終的には修正されて配布されるのですが、アップデート直後はしばらく頭を悩ませることになります。

ChemBioOfficeには様々な機能がありますが、今後試してみたい機能などはありますか?

最近は生体分子を扱う研究も興味をもっています。ChemBioOfficeのパッケージに含まれるChemBio3D は、DNAやタンパク質のような大きな分子の描画、構造最適化についても力を発揮するということなので、機会があれば是非使用してみたいと考えています。

どのような研究者の方に勧められる製品ですか?

有機化学はもちろん、材料化学、生物化学など、あらゆる分野の化学研究に携わる方、またそれを志す学生の方にお薦めしたい製品です。

(本事例作成に関し、原野助教のご協力に感謝いたします)